🎨美学No.8《長沢節》

By waltzblog 4 comments

〈伝説のファッションイラストレーター〉とサブタイトルにある長沢節氏は 、私にとってはセツ・モードセミナーの校長先生であり、絵画の、そして自由に生きることの恩師である。

 「就職の斡旋はしないけど、いつでも絵を描きたい!という気持ちにさせてあげる。」と、入学式の日に話された。そして、その通りになった。お手本なんかなくていい。自分らしく絵を描く。それが全て。が、これが何と難しいことか!! 

数ヶ月に1回、作品を皆の前に並べ批評する合評会があった。「これ、A!!」「これダメ!!」即座に言うセツ先生。「何これ!ワー!汚いうんこ色!!」なんて平気でバンバン言う。「お前、これ最高!!」と、言ってもらったのは何枚あったか。何が美しくて、何が汚いのか……今まで描いてきた絵の価値観がすっかりひっくり返り、最初の半年は悪戦苦闘!美の基準はどこにあるのか!?とにかくは描いて描いて。旅行に行っても、お酒を飲んでいる席でも、写真代わりに皆でデッサンしていた。上向きの顔が描けない、後ろ姿のかかとが描けない、重なり合う指が描けない。ムードだけではごまかしがきかず、「スタイル画」までの道のりは果てしなく遠かった。

鐘の音で授業が始まり、鐘の音で授業が終わる。点呼もとらない。とにかく自由。ただ絵を描くのみ。 お昼は学校にあるカフェ。白いカップ&ソーサーで、セツ先生お気に入りのブレンドでコーヒーを飲み、トーストをかじる。「下品な缶ジュースは持ち込み禁止!」の貼り紙がしてあって、コーヒーはソーサーに手を添えて飲むという決まり。セツ先生の横で聞いた、映画やファッションの話。「あの男優の指が綺麗。骨格が素敵!」と、先生ならではの着眼点。自由でありながらエレガント。本当のおしゃれって何か。セツ・カフェで、知らず知らずに沢山のことを学んだ気がする。

「今日はすっごく綺麗な男のモデルが来るから、描かせてあげるよ。」と誘われ、学校の最上階にある先生の部屋で一緒に描かせてもらった。「なぁ〜んだ、お前、へったくそー!」と、言われるのじゃないかとドキドキしながら描いていた。紙に静かに流れる鉛筆の音。敬愛する恩師との忘れられない時間となった。

スタイル画を学びに来たけれど、一番教えられたのは、自分のスタイルを持つということだった。セツ・モードセミナーは2017年4月に閉校。今日5月12日は、セツ先生の誕生日、そして父の誕生日。二人は今、空から私を見ている。 

4 Comments

うさこ

5月 5, 2021, 12:18 pm 返信

コメント失礼いたします。

やりたい事に向かって他には何も見えなかった10代の自分が頭をよぎります。
きっと沢山の人の思いにも気づかず猪突猛進に突き進んでいたんだろうな…..

初めてロンドンに行った時の言葉に表せない気持ち。全てが新鮮で眩しくて…
スタジオに居られることが嬉しかった。

小さな出会いが大きな導きをくれる事、ありますね♪

waltzblog

5月 5, 2021, 8:20 pm 返信

未来が果てしなく遠くに感じた10代の頃、時間がたっぷりありました。
今の10代、コロナ禍で貴重な時間がSTOPしているのが可哀想です。
早く、夢見る時を戻してあげたいですね。

ふくろうさん

5月 5, 2021, 11:22 am 返信

長沢節氏さんの生き方カッコいいですね‼︎
自分のスタイルを持つ、、、まさにそう生きた人が私の身近にも居ました。私の祖母です。
昔から心底山好きだった。長年住んだ川崎の土地を70歳目前にして離れ、長野県に移住。
山があるから幸せ!とばかりに、全ての生活を一からスタートさせ、人との繋がりも自ら積極的に作り、あっという間に長野県の新聞に載るほどの山好きとして紹介される人になった。
長野に会いに行くと、日焼けした肌が何ともたくましく、好きなことを貫く生き方ってカッコいいなぁと思わせてくれた。
今は空に逝ってしまったけれど、こんな言葉を私に残してくれた。

『飛翔』
大空の広きを 我が心として
頼らず 驕らず あせらず
前向きに努力し
心豊かに翔け
宇宙の未来に向かって

この言葉は、私の生き方の目標になりました。

今は祖母が住んでいた川崎の地に私が住み、双子の弟が山好きで長野県へ移住。
不思議な縁だなぁと思いながら、いつまでも祖母が見守っていてくれてるような気がしています。

祖母以外にも、私の周りにはカッコいい生き方をしている方がたくさん!ありがたく、幸せな出会いに感謝です。

waltzblog

5月 5, 2021, 3:13 pm 返信

私も山好き!おばあさまに弟子入りしたかった(笑)。カッコいい大人が近くにいるのは幸せなこと。さて、自分がそうなれているか……まだまだ諦めずに、切磋琢磨したいものです。

コメントを残す