🎥美学No.73《エリザベス1世》

By waltzblog 2 comments

宝石を施した贅沢なドレス、真っ白な顔の厚化粧と鬘……女性としての鎧を完全装備したエリザベス1世(1533〜1603)は、「処女王 Virgin Queen」と呼ばれたイングランドおよびアイルランド女王。29歳のとき天然痘を患い、頭髪は抜け落ち、顔面にも醜い痕跡が残った。ゆえに、肌を蜜蝋で覆い、その上に鉛や水銀が含まれた白粉をたっぷり塗る厚化粧、禿げた頭は80個の鬘で隠し続けた。美への飽くなき追求、それは全て「永遠に若さを保ち続ける処女王」という神格化したイメージを守るためのものであった。陰謀渦巻く環境では、安心出来る場所は何処にも無い。心を委ねることは誰にも出来ない。統治におけるモットーは「私は見る、そして語らない」

エリザベス1世ほど、希有な歴史的運命と長く戦った女性はいない。彼女の人生、そして、そのヴィジュアル、興味は尽きない対象だ。映像化、舞台化された多くの作品がそれを物語っている。エリザベスを演じるのは、全て私の敬愛する強者の女優達である。

怪奇女優と呼ばれたベティ・デイヴィスの『女王エリザベス』(1939年)『ヴァージン・クイーン』(1955年)が放つコケティッシュな毒。

歴史的事実を丹念に描いたTVドラマ『エリザベスR』(1971年)でのグレンダ・ジャクソン、女王としての演説は聞き惚れる。同年の映画でもエリザベスを演じる。

わずか8分の出演だが、エリザベスの人生をその存在感で演じたジュディ・デンチ『恋におちたシェイクスピア』(1998年)。2017年にヴィクトリア女王を演じる。

ケイト・ブランシェットの『エリザベス』(1998年)『エリザベス ゴールデンエイジ』(2007年)は、衣裳・ヘアメイクとアカデミー賞受賞。圧倒的なクールビューティーで見せる。

TV『エリザベス1世~愛と陰謀の王宮~』(2005年)で、若き家臣エセックス伯との愛に苦しむ晩年の女王を演じたヘレン・ミレン、翌年エリザベス2世を演じる。

メアリー・スチュアートとの葛藤を描いたマーゴット・ロビーの『ふたりの女王』(2018年)は、より醜悪な美への追及に磨きがかかる。

世界中が知っている、一筋縄ではいかない女王を演じるには、相当な度胸と覚悟が必要だろう。どう演じるかは、女優の面構えにかかっている。演じた面々を見ると、ライバルに異存なし!!と言ったところだろう。さて、次なるチャレンジャーは誰なのか?!エリザベスへの私のアンテナは、飽きることなく未来へ続く。

2 Comments

うさこ

7月 7, 2022, 9:44 am 返信

エリザベス1世、
広い領土や民を統治、維持する事は大変なエネルギーを要した事でしょう。
陰謀持って近づく人を振り分け、利用し、時にハッタリで勝ち抜く事もあったのでしょうか…
外見だって力を見せつける大事な要素…

そういえば面接行く時、初めての人に会う時、見た目も大事と言われたなっっ

難題に初トライする人の勇気は素晴らしい!
そして、成功例がある難題にさらにトライする人は「比較」とも戦ってのトライになる…

パワフルなエナジー無しではいられない!
うなぎかな〜笑笑

waltzblog

7月 7, 2022, 12:01 pm 返信

見た目も大事…そうですね。
真っ白な厚化粧で口を真一文字に結んだエリザベスを目の前にしたら、きっと一言も話せない(笑)
「私は見る、そして語らない」その言葉通り、そのヴィジュアルだけでエリザベスパワー全開!!

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