🎥美学No.7《キャバレー》

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ライザ・ミネリと言えばキャバレー。彼女の代名詞になるほどに、歌って踊って、コケティッシュな役柄がそのまんまなハマり役。時は1931年、ナチスが台頭して来たベルリンが舞台。スターを夢見るアメリカ人の娘サリーとイギリスから来た青年の恋物語。

いつも派手でトリッキーなファッションに身を包み、自由奔放に生きるサリー。ある日、疎遠になっていた父親と会うことになり、支度をしている。付けまつ毛を外したノーメイク、いつもは緑のマニュキアを塗っている爪をナチュラルにし、天井のライトに手を透かして「修道女みたいでしょ?」と話すシーンは、いたいけで、愛おしかった。映画を観終わって、友人と二人で買いに行った緑のマニキュア。この映画が嫌いだという男は絶対認めないね……なんて話しながら。

ゲイ・アイコンという言葉がある。ゲイの人達に支持される著名人のことだ。才能があり、表舞台に立てば、華やかでグラマラス。しかし、裏にある実人生は才能あるがゆえの辛い日々。それでも我が道を行く……ゲイ・アイコンはそんな人達。

最も有名なのが、ライザ・ミネリの母、ジュディ・ガーランド。映画「オズの魔法使」でスターとなるが、実生活では、覚せい剤の常用、自殺未遂、結婚・離婚を繰り返す。それでも歌い続けた彼女の人生は、自分の運命に屈しない勇気を彼らに与えた。

この母にして、この娘あり。ライザ・ミネリもまたゲイ・アイコンだ。キャバレーで演じるサリーは、一度は、結婚し、母になる自分を思い描いてみるが、夢を捨てきれない。勝手に中絶し、責める彼に「気まぐれよ」と言ってみせて一人涙する。綺麗に塗られた緑の爪……これこそが、彼女なのだ。舞台袖で涙を振り払い、背筋を伸ばし、ライトに導かれて、観客に希望を与える太陽になる。

♫一人で部屋にこもってないで、歌を聴きにおいでよ。人生はキャバレー♫

The show must go on !! エンターテインメントの力を感じるのは、こんな時だ。

なぜ、この映画に惹かれたのか。圧倒的なライザ・ミネリの歌唱とデカダンス漂うステージシーンも見応え十分で官能的だった。でも、何よりも世間と相容れない自分に涙をみる人生に共感したからだと思う。私のアイデンティティを初めて感じた映画だ。

ライザ・ミネリは2010年、映画「SEX AND THE CITY 2」にゲスト出演。ゲイの友人の結婚式シーンで神父として登場。歌い、踊り、彼らから大喝采を受け、まさに、ゲイ・アイコンとしての面目躍如。

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