🎨美学No.65《ジョージア・オキーフ》

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「アメリカ・モダニズムの母」と呼ばれた女性画家。彼女を知ったのは絵画からではなく、友人からもらった1冊の本『ジョージア・オキーフ 崇高なるアメリカ精神の肖像』。そして、夫である写真家のアルフレッド・スティーグリッツが彼女を撮影した写真集。この2冊でオキーフに惹かれたのだ。画家である本人からすれば、まずは絵画から知ってほしいと思うかもしれない。が、本のタイトルにもある「崇高なる」彼女の生き方が表れているその顔に、まずは魅了された。オキーフそのものが美しいのだ。「自分の描きたい絵だけを描き、自分の言いたいことを言う。これは他者が関与できない唯一のもの」27歳のときに決意した信念を貫いた一生は、「ジョージア・オキーフ」と言う美学なのだ。

画面いっぱいの大きな花、そして動物の骨……美のエッセンスだけを真正面から描く。色彩感覚を研ぎ澄ますために、いつも黒い服。洋服も自身の美学で手作りし、白のワンピースは同じものを15枚、靴も気に入ると色違いで揃える。彼女は自分に何が必要なのかを知っていた。

58歳のとき夫スティーグリッツが亡くなり、ニューメキシコの荒野に二つの家を構える。ニューヨークの喧騒やアートシーンでの人間関係から離れ、目に触れるものに嫌いなものは一点もない生活。芸術家たる孤独を引き受け、美意識を貫くことは、彼女の存在証明。65歳で初めてヨーロッパを訪れる。ピカソに会うことを勧められるも辞退。そして、再びフランスに行くつもりもないと話した。82歳、オキーフは前方の視覚を失う。辛うじて側面の視覚だけを保持するも、正面から対象物に挑んできた彼女は絵筆を置く。そんな頃、20代後半の陶器を創っていた青年が訪ねてくる。オキーフは、この青年に壺の作り方を教わろうと決心し、初めて立体に挑戦。彼とのパートナーシップは、オキーフが亡くなる98歳まで続く。「貴女の人生で最も幸せだった年は?」とインタビューされ「幸福なんてほんの瞬間的なもの」と答え、「最も面白かった年」と質問を訂正させた。

「手に花を持って実際にそれを見るとき、その瞬間、それはあなたの世界です。」オキーフの言葉は、美は与えられるものではなく、自身で創り出すものだと教えてくれる。自分を尊重し、無駄がなく、虚飾がなく、シンプルで、全てのものが調和している彼女の世界。どんな顔をして笑ったのか、怒ったのか、泣いたのか……全てが美しい皺となったオキーフの顔は、崇高なる精神によって完成された。

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