🎥美学No.21《ジュディ》

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映画『オズの魔法使』でスターとなったジュディ・ガーランドの人生を描いたこの作品で、主演のレニー・ゼルヴィガーは1年間のボーカルレッスンを受け、全て自分で歌っている。レニーの歌声は、時を経て、ジュディのメッセージを伝える。

伝記映画のほとんどが、その人生をなぞってしまうだけでつまらない。しかし、イザベル・アジャーニ主演の『カミーユ・クローデル』と並び、この映画は、伝記映画だということを忘れさせる。共通しているのは、観ていると本物の顔も忘れるくらい、イコール以上になっていることだ。もはや、ライザ・ミネリのお母さんは、この人だったんだなぁと、レニー・ゼルヴィガーの顔を結びつけてしまうほど。

ジュディ・ガーランドの大ファンであるゲイのカップルが、彼女に誘われて共に食事をする。同性愛者として投獄されたことを語ると「世間は自分達と違う人間が気にくわないのよ。「くそくらえ!」と答えるジュディ。大好きな彼女の歌をピアノで奏でると、後ろからそっとジュディが歌う。彼は涙する。憧れた大スターが、自分に寄り添う親友のように、ピアノに合わせて、その歌声を聴かせてくれる。彼の涙は、その感動だけではない。歌声が、彼の人生への応援歌に聴こえたのではないだろうか。大丈夫、貴方は貴方らしく……と。

才能があるがゆえに、「普通」でいられない環境を作ってしまったジュディ。寝る時間さえない売れっ子の彼女に、母親は目を覚ますようにと覚せい剤を渡す。今度は眠れなくなると、睡眠薬を渡す。これが、彼女にとっては当たり前の日常になる。10代の少女にとって、あまりにも「普通」とかけ離れた日常だ。それが、彼女の人生を狂わせて行くのは当然の結果。「私を忘れないでね」と歌うラストのライブに拍手を送りたくなる。大丈夫、貴女は貴女らしく生きたのだから……と。

自分らしく生きる……と言うのは、なかなか難しい。そもそも人生は「自分らしさ」を探す旅だ。普通ではない日常の中で、自分らしさを探すのは至難の業。映画『オズの魔法使』で、カカトを3回鳴らして「やっぱり家が一番」と唱えると、家に帰れるドロシーの魔法の靴。ジュディの安心出来る家は何処だったのだろう。

お気に入りの書類バッグがある。赤いスパンコールとビーズが施された赤い靴の書類バッグは、眉間にシワが寄る書類を入れるにはふさわしくない。夢のある企画書だけを入れて持ち運びたい……そんな気にさせる。

♫ Somewhere Over The Rainbow ♫

虹の彼方、どこか遠く、ずっと空高くに、魔法の国があるらしい。

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