👗美学No.103《日本のおしゃれ》

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目を見張るような美しさにため息が出る。贅沢な絵画を身に纏うかのような着物の数々。日本人の職人技、四季を愛でる繊細な美意識、決まり事の中に遊び心があり、着物・帯に半襟などの和装小物で無限大に可能なコーディネートは、着る人に物語を作る。

この写真集は、アンティーク着物収集家・池田重子のコレクションである。1976年、東京目黒で、着物・帯・和装小物全般・古裂などを扱う「時代布と時代衣裳 池田」を開店し、着物ブランド「夢工房」「池田重子きものコレクション」等のデザインを手がけ、1993年から「日本のおしゃれ展」を開催。2015年に亡くなるまで、日本のおしゃれを広く伝えた。

ファッションブランドをリタイアしてから、スタイリングや衣装の仕事が私に来るようになった。その中には和装もあった。着物を着ることもない私が、いきなりスタイリングをすることになったのだ。基本的な知識だけでの勝負。洋服を選ぶ感覚でアンティーク着物を探す中、「池田」を知った。着物、帯、長襦袢、半襟、帯締め、帯留め、帯揚げ、草履……洋服のように、ワンピース1枚でOKとはならない。

ある時、池田さんがいらっしゃった。ドキドキしながら着物を選び、小物でコーディネートをしていき、「どうでしょうか?」と尋ねた。「あら、綺麗じゃない。良いと思いますよ」大家の太鼓判を押してもらい、胸をなでおろした。約束事だけにとらわれず、自由に発想してもOKなんだ……と、着物が楽しくなった。それから着付け教室にも通い、仕事を兼ねながら度々「池田」を訪ねた。今まで知らない美の世界が少しずつ広がるようで、池田さんとお話しするのが楽しみになった。

本の表紙にもなっているダンスをしているカップルの絵は、なんと帯!正面側はヴァイオリン。裾に雪山を滑る少年の姿が描かれている訪問着。正座からすくっと立つと、スキーが現れる!!これを着ていた人は、共にいる人の驚く顔が楽しみであったに違いない。すれ違った人が、ふと振り返ると白い兎!!腰から下はまるでキャンバス!のかもめ!!大正時代にこんなに自由におしゃれを楽しんでいたのだ。着物を作る側も「さて、今度はどうやって遊ぼ」とワクワクしていただろう。

この本に載っている着物スタイルを見ていると、おしゃれに贅を尽くす心意気が見える。約束事を踏まえ、ぎりぎりのラインでピタッと止まる遊び心が池田重子流・粋の美学。古きを訪ね、新しきを知ることは、「秘すれば花」の佇まいが見える。

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