🎥美学No.102《アデル、ブルーは熱い色》
魅惑的な邦題を持つこの映画は2013年公開、第66回カンヌ国際映画祭でパルム・ドールを受賞。アブデラティフ・ケシシュ監督の他に、主演の二人、レア・セドゥとアデル・エグザルホプロスにもスティーヴン・スピルバーグ率いる審査員側より、特別にパルム・ドールが贈られた。これは同映画祭史上初のこと。
高校2年生のアデルは、彼氏とデートをしたり、女友達と恋愛話をしたりする文学好きな女の子。ある日、街で一瞬すれ違ったブルーの髪の女性が心に残る。男友達に誘われ、LGBTが集うバーへ。そこにいたのは、心惹かれたブルーの髪の女性、ミステリアスな美学生のエマ。数日後、エマは高校の前でアデルを待ち伏せ、公園に誘う。アデルの顔をデッサンするエマ。レズビアンのエマがアデルを見つめる眼差しが悩ましい。数年後、二人は同棲。アデルは幼稚園で教育実習をしながら、エマと過ごす平穏な日々こそが幸福だった。が、エマは画家として成功の階段を上ることに日々を費やす。生きていく世界、人生の目標が違う二人にすれ違いが生じる。
レア・セドゥ27歳とアデル・エグザルホプロス19歳、二人が初めて会い、一緒に撮影に臨んだのはベッドシーン。初対面の相手といきなり裸!これは、2人の女優の関係性を作るための監督の策略。二人とも、ほぼノーメイクでの出演。台本は1回しか読むことを許されず、ほぼアドリブ。ベッドシーンには10日間もかけたり、歩くシーンを100回もやったり、特に、二人が壮絶な喧嘩をするシーンは凄い迫力。怒り狂うエマと、涙と鼻水を流しながら懇願するアデル。愛し合う同性同士の喧嘩は壮絶。エマがガラスのドアにアデルを押し付けた際、アデルはガラスで怪我をして、血が撮影現場中に飛び散った。が、監督は撮影をやめず続行。「レアは理性的、アデルは本能的な女優」と監督は語る。リアリティを追求する撮影は過酷だったようだ。
レア・セドゥは大好きな女優。ファッション雑誌やプラダ、ルイ・ヴィトンの広告にも登場し、彼女の物憂げな顔に真っ赤な口紅がよく似合う。が、エマに扮したレアは、彼女の何処に、こんな顔が潜んでいたのか?!と驚く。ちょっとした仕草、ちらっと流れる眼差し、どこを見ても、女心をくすぐる人にしか見えない。絵画や彫刻を習い、美術や心理学に関する読書、身体的トレーニング、若きマーロン・ブランドやジェームス・ディーンの映画研究など、レアの取り組みは想像以上に功を奏し、観る人を魅了する。
情熱的な若い恋には終わりが来る。けれど、若い時にこそ見ることができる熱い色もある。