🎼美学No.91《ニール・ヤング》
70年代ロックの最高アルバムと言われる名盤がニール・ヤングのハーヴェスト。あまたのミュージシャンに影響を与え、時代を創った歴史的作品であり、我が青春のアルバムの一つ。何処に自分が立って生きるのか……当時の「今」と「未来」を思いながら聴いていた。
ニール・ヤングはカナダ出身のシンガーソングライター。最初のバンド、バッファロー・スプリングフィールドは2年足らずで解散。そのメンバーの中に喧嘩ばかりしていたスティーブ・スティルスがいた。1969年、スティルスはクロスビー・スティルス&ナッシュを結成。独特のコーラスワークで人気を呼び、ウエストコーストロックの原型を確立。もっとロック的要素を強めたいというスティルスの希望でメンバーを追加することになり、ソロとして活動していたニール・ヤングが加わり『クロスビー、スティルス、ナッシュ&ヤング』となった。1970年、新バンドでリリースされた『デジャ・ヴ』は4人の個性が光る傑作で爆発的なヒットとなり、70年代の入り口を飾ったアルバムとなった。
同じ年に、ヤングのソロ第3作『アフター・ザ・ゴールド・ラッシュ』も発売。 これも大ヒット。ロック史上に残る名作を同じ年に2枚もリリース。それだけでも凄いことなのに、2年後に発表された4作目のアルバム『ハーヴェスト』は、それらを上回るほどの完璧な仕上がりで、ニール・ヤングの名を歴史に刻んだ。
私にとっての70年代は、映画『いちご白書』で始まった。それはクロスビー・スティルス・ナッシュ&ヤングを知ることでもあった。翌年公開された映画『小さな恋のメロディ』で再会。自ずとそれぞれのアルバムに手が伸びた。15歳での出会いは強烈な印象を残す。それが後世に名を残す作品ならば尚更だ。多感な十代に70年代を生きて幸せだったなぁと思う。音楽も映画も時代を創る名作が溢れ出ていた。特に音楽は、稀有なミュージシャン達が世に現れ、彼らが旬な時期に沢山のライブを観ることが出来た。エリック・クラプトン、サンタナ、レッド・ツェッペリン、ディープ・パープル、シカゴ、デビッド・ボウイetc.…この経験は10年後に生まれていたら無かった。音楽の捉え方は、初めて耳にする年齢によって違うだろう。15歳で感じた音楽は、青いままで身体に残り、一人暮らしをするようになって更に深く染み入った。
ニール・ヤングの歌声は、自由だけど、どこか物悲しい風が吹いている。私にとって彼の音楽は、ボヘミアン精神の象徴でもあるのだ。