🎥美学No.77《プリシラ》
3人のドラッグ・クイーンがショーを行うため、オーストラリアの大都会シドニーからバス「プリシラ号」に乗り、3千キロの旅に出る。荒涼とした砂漠の風景にドラッグ・クイーンならではのキッチュで派手なメイクと衣裳が映える。『愛はかげろうのように』(シャーリーン)、『ゴー・ウエスト』(ヴィレッジ・ピープル)、『マンマミーア』(アバ)などのヒット曲にのせ、彼らの「愛」を探すロードムービー。
1994年公開の映画が大ヒット、2006年にミュージカル舞台としてオーストラリアで上演。ロンドン・ウエストエンド、NY・ブロードウェイを含む15か国以上の国で上演。私はロンドン・ウエストエンドのパレスシアターで観劇。10代の学生団体も来ていて、まさに老若男女が開演前から期待に大興奮。めぐるめく色彩のエンターテイメント満載の舞台は、更に観客をパワーアップさせ、劇場自体が興奮のるつぼ!!観客と共に楽しむ舞台は解放感で熱かった。
ニューヨーク、ロンドンに行くと、毎日のように劇場に足を運ぶ。それは、まずは舞台のクウォリティーの高さ。ブロードウェイやウエストエンドといった劇場街にかかっている舞台は世界市場が相手。つまり、世界中から観客を集め、ロングランさせて収益を作るビジネス。つまらないものは、すぐ看板をおろされる競争の世界。自ずとクウォリティーは上がる。それと、劇場が放つ「楽しもうね」というムード。解放された心で観るから舞台は楽しいのだ。
あるときのロンドン、友人との約束まで時間があったので、ふらっとウエストエンドに。「One Flew Over the Cuckoo’s Nest カッコーの巣の上で」が目に止まった。事前の舞台情報もなくチケット売り場に。空いていたのは前列の良席。幕が上がって驚いた。主役は、何と!大好きなクリスチャン・スレイター!アメリカの銀幕のスターがすぐそこに!!ハリウッドを代表するお騒がせ俳優の1人という不名誉を持っている彼だが、ウエストエンドの舞台で起死回生。
ドラッグ・クイーンの「やりたいことをやるわ!」という、何にも囚われない自由で派手な衣装が大好きだ。ビーチサンダルのドレスを創ったデザイナーのリジー・ガーディナー、この映画でアカデミー衣裳デザイン賞を受賞。授賞式には、全てに彼女の名前が刻印されたアメリカン・エキスプレスのゴールド・カードを繋げたドレスで登場。後にドレスはオークションにかけられ、収益は米国内のエイズ研究財団に寄付。遊び心が盛り立てるビジネスの世界は羨ましい。