👗📖美学No.44《VISIONAIRE》
『VISIONAIRE』は、1991年に創刊されたファッションとアートを融合したビジュアル・マガジン。ファッションフォトグラファーのスティーブン・ガン、ヘアメイクアーティストのジェームズ・カリアドス、モデルのセシリア・ディーンによってNYを拠点に創られた。発行時期や部数、値段、編集方法、形状も号によってそれぞれ。ファッションとアートの壁を破り、今や雑誌を超えたヴィジュアル・プロジェクトだ。バックナンバーは高額で売買され、現在も世界を駆け回っている。
当時のファッション界は、企業としての成長を模索して巨大化していた。大きな勢力があれば、必ず相反する価値観を持つ、小さいけれどエッジなパワーが現れる。ヴィジョネアもそうした時代背景の中で生まれた。値段は高くなるが、広告には依存せず、クリエイションの自由が優先。そのヴィジョンに多くのクリエイターが賛同した。
私が持っている本書はNo.22。「シックとは何か?」をテーマにアーティスト達が参加。限定部数5000部のNo.1192…と手書きでナンバーが書かれてある。
マノロ・ブラニクのデザイン画とエミリオ・プッチの生地。
イヴ・サンローランのデザイン画とフランスの大女優カトリーヌ・ドヌーブが愛用のレターセットでサンローランへ書いた実際の手紙。
エリック・ベルジェールのデザイン画とそのシャツ生地。
紙ナプキンに付けられたパロマ・ピカソのキスマーク。
マドンナが映画『エビータ』のプレミアで実際に着たベルサーチのドレスが限定部数に裁断されてある。スパンコールと生地の色が分かるように5000ピース!!ちょっとセロテープを剥がせば取れてしまう小ささは涙ぐましい。
30年前、ファッションとアートは結びついてさえいなかった。You TubeやInstagramも無かった。創刊当時、若かった三人の「こうなったら面白い」というシンプルな発想から型破りなアイデアが生まれ、人々を巻き込み、大きなヴィジュアルプレゼントとなって世界に発信された。考えを実現、継続させるための「関係」がお金を動かす仕事になったのだ。実際に手に取ってみなくては分からない、リアルな存在としてのコミニュケーション創造物。受け手主導ではなく、発信側に強いメッセージがあり主導権を握る、たくましい仕事だ。
Magazines and Books will never die. 編集長スティーブン・ガンの言葉が未来に生き続けるのを願う。