🎥美学No.32《制服の処女》
今から90年前、1931年製作のドイツ映画。トーキー時代を迎えて間もないときに作られたこの作品、女性監督で、キャストも全員映画初出演の女性のみ。男性は一人も出て来ない。私が観た映画で最も古い時代の映画だ。
何と言っても、制服が私好み。白い襟に黒のリボンタイ、ストライプのワンピースに黒のエプロン、厚手のタイツに1本ベルトのぺたんこ靴。胸にはリボンで作られた花のバッヂ。後半は、白の柔らかい生地、繊細な飾りのついた大きな丸襟、裾にフリルが施されたワンピースに白手袋。こんな素敵な制服、着てみたい。モノクロという特性がよく生かされた衣装で、ひたすら美しい。
全寮制の厳格な教育で知られる女学校が舞台。厳しくも愛情を注いでくれる女教師に恋い焦がれる女生徒の話。美しい女教師は、就寝前、ベッドにいる生徒達に、一人ずつおでこに「おやすみ」のキスをする。そして、入学したばかりの主人公の女生徒だけに、唇にキスをする……。
この原作を知ったのは小学生のとき。母方の祖父がプレゼントしてくれた本が『制服の処女』。祖父はその昔、学校の校長をしていて、今思えば、相当な文学青年だったのだろう。父が、母との結婚の承諾をもらうために初めて祖父を訪ねたとき、まず聞かれたのが「君は、三島由紀夫をどう思う?」だったそうだから。誕生日や入学、卒業のたびに、葉書が来た。そこには、祖父からの霊験新たなお言葉が書かれ、特に留意すべきことには赤鉛筆で波線が引かれてあった。時には、全ての言葉が大事だったのか、ほぼ全てに波線で、葉書が真っ赤だったこともある。この言葉は大事、よーく読んだら、やはりこれも大事……と、波線を増やしていった祖父の様子を想像すると可笑しい。その後、紺色の波線が追加されたので、おそらく赤と紺、両方くっついた色鉛筆を使っていたんだろう。
映画が製作された頃、日本でも女学生の間で使われた「エス」という言葉。Sisterの頭文字からそう呼ばれていた。女学生が上級生や女教師を恋い慕う、男性立ち入り禁止の密やかで甘美な世界。幼心に『制服の処女』という題にドキリとした。少女期の繊細さと危うさが現れている。禁断の……という言葉が眠っているかのよう。
今は何一つ覚えていない祖父から贈られた言葉。小学生に贈った『制服の処女』に、祖父はどんなメッセージを込めたのだろう。女学生への誘い?禁断を覗いてみなさい、そこには君の人生が……まさか。
うさこ
8月 8, 2021, 12:58 pmコメント失礼いたします。
歳を重ねて初めて分かる、あの時祖母が言ってた事、母が言ってた事、先生が言ってた事……若い時は理解出来ず反発とかしちゃっったりして….
なのに気づけば同じことを言ってる自分がいてっ…..笑
自分より先に人生を歩んでいた人には見える、私には見えない事、気づかない事…..
大好きだった祖母が言ってた言葉の意味を自分がお婆ちゃんになったら分かるのかな….? それまでは答えの自問自答を繰り返すね!
waltzblog
8月 8, 2021, 2:44 pm「なぜ『制服の処女』だったの?」と、祖父が生きているうちに聞いておけば良かった!(笑)
だんだん、先人が居なくなり、行く道も残りわずかになると、示唆してくれる人も少なくなります。
でも、自問自答しているうちが花!迷っているのは生きてる証拠!!😀