🎼美学No.29《ワルツ・サントラ盤💿》
まさか、自分がCDを制作するとは思わなかった。音源を収録し、盤のデザインまで。大変だったけれど、知らない世界を知るのは面白い。2017年、舞台『ワルツ〜カミーユ・クローデルに捧ぐ〜』が、ロダン没後100年記念事業として開催された静岡県立美術館ロダン館公演。そのサントラ盤CDを制作するにあたり、どうしてもやりたかったのが、デジパックというパッケージ。デジパックとは、CDのパッケージング仕様の方式で、厚紙の台紙にプラスティック製のトレーを貼り付けるのが大きな特徴。観音開きに出来るので、歌詞カードや解説などを盛り込める。だが、コストが俄然高い!!予算は無いけれど、素敵だな、カッコいいなと思った物じゃないと、やはり私の美学から逸れる。そもそも制作した自分が好きになれない物は、作っても意味がない。金額に腕組みしてしまったけれど、やはり、プラスティックのパッケージには愛着が湧かない。勿論、CDなのだから音を再生してなんぼだけれど、プラスティックは開けるのにも何かぞんざいになってしまう。触れる感触も、私にとっては好きになる大事な要素なのだ。
ワルツ・サントラ盤のパッケージデザインは1面で入稿。制作中は、どこに何がくるんだ?!と、パズルをするようであった。
全曲、テーマ曲をお願いした縁からワルツの音楽監督になって頂いた坂田晃一先生の編曲。音楽を聴いているだけで、『ワルツ』の物語、心情の推移が分かる。作曲はもとより、主旋律をさらに大きな世界に誘う編曲家としての仕事も素晴らしい。テーマ曲『カミーユのワルツ』、同じ楽曲でも、違うシチュエーションが見えてくるアレンジは、旋律や和音が一篇の詩を詠んでいるようで美しい。主人公が初めて彫刻《ワルツ》と出逢うシーンがある。「私は扉を開けました。左側に窓があり、斜めに入る光を迎えるようにブロンズ像がありました。」そのシーンが音楽になったのが、11曲目の『カミーユのワルツ』。ピアノが光を奏でている。情景が見えるようだ。最終的に台詞はカット。語る言葉がなくとも、それ以上にシーンを創り得るのが、劇伴のスペシャリスト「坂田晃一の音楽世界」である。
『ワルツ』という脚本が音楽になったCD。歌唱・坂下忠弘、ピアノ・大杉光恵、ヴァイオリン・安藤梨乃、そして作曲者自ら演奏のチェロ……ワルツ音楽チームの誇れる仕事、そして何よりも、敬愛する坂田晃一先生の音楽世界を残せたことは、私の人生の尊い財産だ。
『ワルツ〜カミーユ・クローデルに捧ぐ〜』サントラ盤💿はこちらから。 https://shop.waltzproject.com/categories/3192813
《坂田晃一ロングインタビュー》!!https://www.ntvm.co.jp/interview/new003/index.html