👗📖美学No.25《 BEAUTY in EXILE 》
アレクサンドル・ヴァシリエフ 著
20世紀初頭のロシア革命後、亡命した芸術家や貴族達はパリ、ニューヨーク、ベルリン、コンスタンチンノープル、ハルビンなどに流れ、独特なセンスで芸術界やファッション界に多大なる影響を与えた。その軌跡が800枚以上の写真・イラスト付き解説で 綴られた珠玉の一冊。著者が私の友人と知り合いだったことから、この本を知った。写真とイラストを見ているだけでは飽き足らず、辞書を引き引き訳して読んだ。出てくるワードはファッション、バレエ、美術に関する単語。馴染みのある名詞が楽しくて、和訳は大学ノート数冊に及んだ。
斬新な演出、舞台美術、衣装でロシアのエキゾティシズムを見せつけたディアギレフ率いるバレエ・リュス。伝説のダンサーとなったニジンスキー、アンナ・パブロワ、作曲家のストラヴィンスキーなどを世界に知らしめ、バレエ界のみならず、ファッション界・音楽界においてもセンセーショナルを起こす。
多くの亡命者を受け入れたパリでは、彼らによって多くのファッションメゾンが設立。特にココ・シャネルは 、亡命ロシア貴族ディミトリー大公との恋愛を通じ、ロシア出身の芸術家達を支援。ディミトリー大公は彼女に調香師を紹介し、シャネル香水の代名詞「No.5」が創られた。ロシア貴族夫人達の繊細で美しい刺繍や、裏地に毛皮をあしらったコート、イミテーションジュエリーなど、ロシアのセンスを取り入れたモードで、シャネルは自身のメゾンを確立した。
シャネルと契約して仕事をしていたのが、ディミトリー大公の姉で最後のロシア大公女マーリアであった。彼女は『キトミール』という名前のメゾンを設立。
ディミトリー大公と共に怪僧ラスプーチンを暗殺したとされるユスポフ公爵とその妻イリーナは『イルフェ』を設立。
ロシアの「美」は、モデルという職業も大きく変えた。当時肉体労働でしかなかったモデルの仕事を憧れの座にすえたのだ。美しさに加え、洗練されたマナー、優雅さとは何かを知っていた彼女達はエレガンスの代表となり、ロシアンビューティーがパリメゾンを世界に知らしめた功績は大きい。彼女達のフォトジェニックな容姿は、シャネルやエルザ・スキャパレリが競って起用し、ヴォーグ誌やハーパーズ・バザー誌を飾った。
後に、著者であるヴァシリエフと仕事をすることになる。メールで依頼した古典バレエの衣装、すぐに返信が来たときは大興奮!なんだか100年前のロシア貴族からメールが来たような錯覚に陥った。
うさこ
7月 7, 2021, 9:00 am『BEAUTY in EXILE』 ひゃー、見てみたい!
亡命による芸術や美の拡散…
当時はセンセーショナルな出来事だったんでしょうね。
グローバル社会〜コロナ禍からのオンライン社会〜
ひっくり返るような価値観…
「美が勝ったのです。どんなに社会が混乱しても美しいものが求められたんです。」
バレエ史の先生が言っていた言葉を思い出します。
ところで、今の若者はシャネルが人のお名前って知っているのかな?笑笑(*^▽^*)
waltzblog
7月 7, 2021, 9:08 am「美は勝つ」……よいですね。美しいものには癒されます。