📖美学No.5《私デザイン》
石岡瑛子 著
凛と立つ赤「 I=私 」。まるで石岡瑛子本人が、日本人として世界にすくっと立っているかのようなデザイン。2012年に73歳で亡くなった石岡瑛子は、世界中から仕事をオファーされた国際的なアートディレクター。フランシス・フォード・コッポラ、ジョージ・ルーカス、ポール・シュレイダーetc.、彼女を必要とするクリエイター達は、全て世界に名を馳せた人物ばかり。そして彼らのオファーに必ず期待以上の結果を出し、観客には想像以上の感動を起こすのが石岡の仕事だ。
本書に書かれているのは、壮絶な仕事の現場だ。世界でも名だたるプロデューサーとアーティストとの板挟みで、何度も窮地の事態になりながらも、自身のアートワークは「デザインは自己を語る言葉」と、確固として貫く。規模からすれば何万分の一だが、あちらを立てればこちらが立たずという状況は、私にも経験あることなので、読んでいて胸が痛かった。
一番感じることは「プロフェッショナル」な仕事の重さだ。「デザイン」という仕事をしっかり表現出来るようにするための様々な努力と神経を使う。あれだけのデザインを創造しながら、愚痴を聞いたり食事に誘ったり、人間関係においても出来る限りの采配を振るう。だから仕事はどんどん重くなる。「プロフェッショナル」な仕事は、人に喜ばれて価値がある。自分の創った作品だけでなく、総合的な成功に導くためのプロセスこそが「仕事」と言えるのだろう。
《Timeless 時代を超え永遠に残るものであるか? Originality 独創性はあるか? Revolutionary 革新的なものであるか?》石岡が自分のデザインが正しい答えになっているかどうかをチェックするときに唱えた言葉。
東京五輪ロゴ問題から次々に出てくるクリエイションの不信感。彼女が生きていたらどう感じたのだろうか?ネット検索は必須、結果、情報過多によっていつどこで自分の頭にインプットされているかも分からなくなり、その情報を利用するのも不思議に思わなくなってしまう。唯一無二ではなく、どうアレンジするかでデザインの数を増やしているような気がする。嘆かわしいことだ。まだまだ彼女に叱咤激励して欲しかった…と、つくづく思う。
本書のカバーをはずすと石岡瑛子の表現者としてのキーカラーREDが現れる。そこに立つ「 I=私 」は白。彼女が創る世界は、研ぎすまされた美しさと宇宙を感じる。その潔さに見る側は背筋を伸ばす。彼女が生きていてくれたなら、東京五輪も、デザインという仕事も、未来と信頼を与えてくれたに違いない。
akihiro.miyatake
4月 4, 2021, 11:30 am“プロフェッショナルな仕事は人に喜ばれて
価値がある”
ほんと今こそ最も大切にしたい価値観です。
コロナ禍で、多くの企業も痛んでいますが、会社存続を目的にとりあえずできるコスト削減に取り組ということになりますが、今こそ社会や目の前の人の為に何をするかを考えて行きたいと思いました。
その先に会社存在が出来ればサイコーですね。
waltzblog
4月 4, 2021, 8:29 pmコロナ禍も2年目、そろそろ、受け身の変化から積極的変化にしたいところですが、大好きなお店の「閉店」の貼紙に胸が痛みます。
プロフェッショナルとして、今の時代だからこそ見える「何か」を探したいですね。
「見えないものは見える」本書で石岡瑛子が語っています。その目を持ちたいです。