👗美学No.83《ファッション by TASCHEN》
《服を着る全ての人々への贈り物》18世紀から現代まで、京都服飾文化研究財団の西欧服飾コレクション約500点を掲載。著者は財団のチーフ・キュレーター深井晃子。京都服飾文化研究財団は、西欧のファッションを社会的、歴史的、美的見地から捉えて研究する目的で1978年に設立された。収蔵品は、約1万1千点。その中から選りすぐった服を、当時の体型を持つマネキンに着せ、リアルなファッションとして蘇らせた写真集。生地の質感、縫製、刺繍や装飾など、細かいディティールまでよく分かる写真に目が釘付けになる。
ファッションは進化しているようで、回帰しているようでもある。ファストファッション全盛の現代、安くてタイムリーに欲しいのが現代の服。出来上がる服を待つことはない。新たなスタイルを待つ楽しみもファッションにはあった。
「知的好奇心をくすぐるテーマを選抜したTASCHEN(タッシェン)の本は、世界中で手に入るうえリーズナブル。収蔵品の写真集出版を考えたとき、世界を視野にいれたドイツの出版社タッシェンの名がいち早く浮かんだ。」と語る深井晃子。
そんなタッシェンを設立したベネディクト・タッシェンに会ったことがある。
ある仕事の依頼でロンドンへ。出版パーティー会場に彼が来ると言うので、突撃任務。韓国と日本のハーフのゲイ男性が私の通訳。パーティー前、彼は言った。「ロンドンで英語を流暢に話すのは当たり前。タッシェンの社長に存在を覚えてもらうなら、拙くとも、あなたがあなたの言葉で話した方がいい。僕は後ろにぴったりついて、間違った言葉はフォローするから。」会場に入って待っていると、来た来た!派手な太い白黒ストライプのスーツを着たタッシェンが!!「Hello」と笑顔で握手を求める私。彼は大きな眼で私をじっと見つめ、真摯に話を聞いてくれた。とりあえず大任を果たした私に「よかったら僕の家に来ませんか?」と通訳の彼。お邪魔したのは、彼の趣味満載の素敵な部屋。彼の本業は映像作家だった。彼の創ったフィルムを見たりお酒を飲んだり楽しいひと時を過ごして帰るとき、「これ持っていって。」と、渡してくれたのが、鮭のおにぎりとお味噌汁。話しながらも度々キッチンに入っていたのはコレだったんだ!と感激!!「朝食に食べてね」ドアの向こうの笑顔が忘れられない。
ベネディクト・タッシェンも通訳の彼も、私の心にしっかりと刻まれている一期一会。ファッションも人の繋がりにも国境はない。