📖美学No.1《美学 Que Sais-Je?》
「美学」という言葉が好きだ。
美とは何か? 何が美しいものなのか? 何を美しいと感じるのか? 美しさは何のためにあるのか?
「美学」とは、美しさについて哲学的に深く掘り下げて考えてみる学問。
私の手元にある1冊の本。 ズバリ!なタイトルと美しい装丁に惹かれて買った新書は、1951年に創刊され、現在も4000点以上が継続して刊行されている白水社の「文庫クセジュ」シリーズ。 「クセジュ」は「Que Sais-Je?」というフランス語で、「私は何を知っているのか?=何も知らないではないか」と自分に問いかける意味。 思想家モンテーニュが座右の銘とした言葉。
このシリーズ、なかなか読むのは難しいのだけれど、何と言っても装丁が大好きだった。 現在の黄色い装丁は800番台以降からで、700番台までは、ギリシア神話の神々のシルエットがモチーフで、分野によって6色に分類されていた。
「美学」はNo.635。
アプロディテ:芸術・趣味 /アテナ:語学・文学/ゼウス:哲学・心理学・宗教 /ヘラクレス:歴史・地理・民族学 /アレス:社会科学 /アポロ:自然科学
ちょっと背伸びしてみようという気にさせる、知識欲をくすぐるギリシアの神々。 このデザインセンスは、現代では真似出来ない。「思想」という言葉が権利を持っていた時代ならでは。
内容は、プラトン、アリストテレス、カントと哲学から始まり、観念論的美学、批判的美学、絶対自由美学とくる。 そして、芸術の哲学・心理学・社会学、芸術の価値などが書かれている。
久々にページをめくっても、読んだ記憶が全くないほど忘れている! ただ1行、線が引いてあった。 「すべての創作は何よりもまず出産である。」 後に続くのは、「産みの肉体的な苦しみのあとに、自分の分身を世に出したという産みの法悦が続くのだとすれば、たとえ憂鬱や迷い、そして苦悩が、勝利を収めたという歓喜に先行するとしても、あらゆる創作は悦びのなかで生ずるはずである。」 30年前、当時この言葉が私に必要だったのか……何をしていたっけ?と、思いは巡る。
本も装丁に惹かれて…や、音楽もレコードジャケットに惹かれて…があった時代。 好きなものを手に入れるには、五感以上の第六感!というヤツを発揮していたに違いない。
「美学」という響きには、「私はこう生きます」という凛とした人生観が感じられる。