👗美学No.37《ワルツ衣装-2》

By waltzblog 3 comments

2014年に創ったパフォーマー・坂東祐子さんの衣装。このドレスで、彼女のやるべきことが見えたような気がする。長いスカートどころか、足は全く見えず、普通に歩くだけで生地を踏んでしまう、下半身全てを覆い隠すようなAラインの裾。彼女の美しい背中をフューチャーしたデザインは、縫っているときから舞台での彼女の姿が見えていた。

 

 

2017年は『ワルツ』美術館公演の年。練馬区立美術館、静岡県立美術館ロダン館公演のために創った坂東さんのコート。麻生地を10mは使った。高い天井と広い空間で、もう一歩、衣装も新しいチャレンジをしたかったから。踊りにくいことこの上ない!これは、黒いドレスの比ではない!!彼女は軽々と衣装を振り回しているが、実際私が着てやってみると、生地の重さに身体が振り回され、重心がとれない。鍛え上げられた筋肉を持つ彼女だからこそ、衣装を優雅にする。さぞかし慣れるまでに大変だっただろう。が、制作時は、彼女の身体がこの布を操るであろう姿にワクワク、楽しみで仕方がなかった。今までの公演で、一度たりとも衣装でのトラブルはない。「しょっちゅう踏んでるよ。」と、彼女は笑って言うが、見ている側には全く分からない。

語りの若村麻由美さんの衣装は、胸元がベルベットのシフォンのワンピース。日本舞踊の名取りでもある彼女は、所作がとても美しい。台本のページをめくる指、涙を押さえるハンカチを持つ手、椅子に腰掛ける、立つ、そして歩く……その全てが、1本の美しいラインで繋がっているよう。

今では時効の裏話だが、練馬区立美術館公演の彼女が登場するシーン。公演場所のホワイエ裏を上がり、幾つかのドアを開けて吹き抜け上の階段から出てくる手筈。が、手違いでドアに鍵が!!始まってしまった私の挨拶をひきつった(きっと!)顔で見ながら、1人かけずり回ってドアを開けてもらい、やっと定位置に。私達は、それを公演後の打上げで知った。もう、ビックリ!!蒼ざめながらも、長い衣装をむんずと掴んで、走って、走って、走ったに違いない。それは、後で衣装を見たときの裾で分かった。プロデューサーとしては、申し訳ない!!に尽きるのだが、何事もなかったように、息も切らさず平然と「カミーユ・クローデル……」と言ってのけた彼女には、ただ、ただ、脱帽。

素晴らしいパフォーマーである二人、そして、私にとって大切な友人でもある二人は、私の衣装を難なく着こなし、自分のモノにして悠々としている。何があっても微動だにしない、舞台上でのたくましさに、雄々しいその姿に、私は惚れるのである。あ、勿論、美しさにも。

3 Comments

うさこ

9月 9, 2021, 2:34 pm 返信

コメント失礼致します。
素敵なワルツ衣装…それを着こなし作品に物凄い生命力を生み出すお二人。
「魅力的」…の一言に尽きます。

そしてリラックスした時の宮本さんと3人のモノクロ写真。
あー、と脳裏を巡るこのシーン。
この時、素敵だなー、とただただ見ていた私。この一瞬を写真に収めていたフォトグラファー、M.Tにもブラボーを!! 
ありがとう!

髙木美香

9月 9, 2021, 8:43 am 返信

うさこさん〜ありがとうございます♪

ワルツを司る…なくてはならない唯一無二の三人✨

二人を思い描き創られた愛情たっぷりの衣装👗

その衣装を纏い輝きを放つ二人✨

プライベートでもとても素敵な三人…
本当美しい😍

知らず知らずのうちに写真におさめてました〜なのでちょっとブレてますが…😅
お気に入りの写真です🤗

坂東祐子

9月 9, 2021, 11:01 am 返信

敬愛するお二人との出会いは、私の人生の宝物です✨

練馬と静岡での若村さんとの共演では、言葉に表せないほど、たくさんのことを学ばせていただきました。
ブログの中の写真にある、二人で視線を合わせたシーンは、彼女の眼の中に吸い込まれるかと思うような一瞬でした。視線一つでこれほどに多くを語ることができるのかと、演じることの持つ力に衝撃でした。そして、この世のものとは思えないほど美しい眼。

衝撃と言えば、宮本さんからこの衣装を渡されたときの衝撃も鮮烈です(笑)
ルルべをしてもまだ余る長さ…一歩踏み出すことすら難しかった衣装。
前回の「バー・アスティエでスカート」でも十分すぎるほどの衝撃でしたが、さらに長い。
そして、その上に「重い」コート!
あくなき挑戦者の宮本さんの発想はいつも柔軟でパワフル。
逞しいのは宮本さんです。

長いドレスともっと長いコート。
何度もこれを着て踊るうちに、完全に身体の一部となりました。

フランス、カミーユ・クローデル美術館公演のラストで、コートをそっと床に沈ませたとき、そこには魂が宿っていました。
宮本さんのデザインする衣装に新たに出会う度に、その感性とメッセージ性に感動します。

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