🎥美学No.15《旅立ちの時》

By waltzblog 2 comments

主人公ダニー(リヴァー・フェニックス)の秘密。それは、両親がベトナム戦争当時、ナパーム工場を爆破し、テロリストとしてFBIに指名手配された犯人だったこと。名前を変え、髪の色を変え、逃亡を続ける家族。高校生になったダニーは、音楽教師にピアノの才能を認められ、音楽大学を勧められる。そして、音楽教師の娘(マーサ・プリンプトン)との恋。家族、音楽、恋人……彼に選択の時が来る。

1993年、リヴァー・フェニックスは23歳という若さで、ヘロインとコカインの過剰摂取が原因で倒れ、心不全で死去した。反麻薬活動を行っていた本人が、急性麻薬中毒で倒れたという衝撃、彼は謎を残したまま、伝説の人となった。

幼い頃からヒッピーである両親に連れられて各地を転々とし、両親の信じるカルト教団「神の子供たち」への参加を余儀なくされた。この教団は、大人のみならず、子供や幼児にまでもセックスを奨励していた。「4歳の時に童貞を喪失し、性に対して混乱した」とリヴァー自身が認めた恐るべき事実は、将来の自分を不安にする材料として十分だった。

彼は俳優のかたわら、環境保護活動、動物愛護、そして、ヴィーガン(完全菜食主義者)としての生き方を選んだ。この映画で共演し、恋人となったマーサ・プリンプトンがレストランでカニを注文したとき、リヴァーは失望して涙をうかべ席を立った、というエピソードもある。

来日した際の記者会見で、映画評論を仕事にしていた私の友人は、会場にいた。一通りの映画宣伝が終わると、やおらリヴァーが話し始めた。それは森林伐採の危険、地球の危機の話だった。突然の話題に会場はしらけたが、彼は静かに熱弁をふるった。話し終わると、記者達に小さなピースマークの缶バッジを配った。友人はそれを見て、純粋すぎて痛々しかった……と、私に話した。

2020年、弟のホアキン・フェニックスはアカデミー賞主演男優賞を受賞。受賞スピーチは、リヴァーが17歳の時に書いた詩で締めくくった。“Run to the rescue with love, and peace will follow.”「愛をもって救済へ向かえ。そうすれば平和はついてくる。」

1987年、この映画に出演した17歳のとき、リヴァーは地球を思い、深い葛藤を抱えていた。2015年に国連サミットで採択されたSDGs(持続可能な開発目標)、そして、コロナウィルスに侵された今の地球、彼が生きていたらどんなメッセージを残しただろう。

 

2 Comments

うさこ

6月 6, 2021, 12:23 pm 返信

リバー フェニックス…

『スタンドバイミー』、3回も映画館へ見に行った。
宮本さんのブログを読むまでリバーフェニックスについて何にも知らなかった!
そんな自分にショック。
やはり上面しか見てなかったのかしら…

ストーリーとリバーフェニックスのカッコ良さだけで後は自分に酔っていたのかも〜
若い、とはそんな物…と何方か言って欲しい(苦笑)

そして3回も映画館に付き合ってくれた友よ、ありがとう!

waltzblog

6月 6, 2021, 9:53 am 返信

若さとはそんなもの……ジェームズ・ディーンしかり、青春スターは早逝😢ゆえに伝説となるのでしょうねぇ。

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